近年、成年後見制度の利用が注目されています。しかし、この制度には深刻な問題点が潜んでおり、利用をためらう声も多いのが現状です。今回は、成年後見制度、特に法定後見の問題点と、代替手段について解説します。
成年後見制度とは?
判断能力が低下した人の財産管理や身上保護をサポートする制度です。任意後見と法定後見に大別され、法定後見は既に判断能力が著しく低下している場合に、家庭裁判所への申し立てによって後見人が選任されます。
法定後見制度の問題点
- 後見人の選任問題: 最大の懸念は、後見人を自由に選べない点です。親族が希望しても、弁護士や司法書士などの専門家が選任されるケースが多く、親族が選ばれるのは全体の2割程度と言われています。これにより、被後見人と後見人の間に良好な関係が築きにくいケースも発生します。
- 費用負担: 後見人には報酬が発生し、月額数万円の負担となる場合もあります。年金暮らしの高齢者には大きな負担となり、利用を躊躇する要因となっています。
- 財産管理の柔軟性欠如: 被後見人の財産は厳格に管理され、旅行や外食などの費用支出にも制限がかかる場合があります。家族の生活費にも影響が出るケースがあり、大きな不満につながっています。高額な支出には都度、家庭裁判所の許可が必要となるなど、手続きの煩雑さも問題視されています。
- 制度解除の困難さ: 一度制度を利用すると、被後見人自身が明確な意思表示をしない限り、解除は極めて困難です。判断能力の低下した本人が意思表示をすることは現実的に難しく、一度開始すると後戻りできないという点が大きなリスクとなっています。
- 後見人による不正リスク: 近年、後見人による横領などの不祥事も発生しており、制度への信頼を揺るがす事態となっています。
成年後見制度の評判の悪さ
上記の問題点から、成年後見制度、特に法定後見は評判が悪くなっています。後見人の選任における不透明性、財産管理の柔軟性欠如、費用の負担、制度解除の困難さなどが主な理由です。
代替手段
成年後見制度の代替手段として、以下の制度が注目されています。
- 任意後見制度: 将来、判断能力が低下した場合に備え、後見人を自分で選任しておくことができます。信頼できる家族や友人を後見人に指定することで、法定後見における後見人選任問題を回避できます。
- 家族信託(民事信託): 財産管理を信頼できる家族などに託す制度です。成年後見制度に比べて柔軟な財産運用が可能で、被後見人の生活の質を維持しやすいというメリットがあります。
このあたりの代替手段については、また別記事で書きたいと思います。
まとめ
成年後見制度は、判断能力が低下した人を守るための重要な制度ですが、現状では様々な問題を抱えています。利用を検討する際は、メリットだけでなくデメリットも十分に理解し、家族信託などの代替手段も視野に入れて、最適な方法を選択することが重要です。 必要に応じて、専門家への相談も検討しましょう。とはいえ、相続を考えた際の第一歩目は、遺言書を書くということだと思います。遺言書についてもまたまとめたいと思います。